証紙はありますか?証紙とは?
着物を買取に出したい人の中には「証紙についてよく知らない」「査定に証紙は必要か」「着物を売りたいのに証紙をなくしてしまった」「落款とは違うのか」など、証紙にまつわる困りごとを抱えている方は多くいます。
今回の記事は着物の買取の際に知っておきたい証紙の役割、落款との違い、証紙がなくても買取してもらえるかどうかをご紹介します。
着物を買取に出す前に不安な方は、こちらの記事に目を通すことをおすすめします。
よく耳にする「証紙」とは?
「証紙」とは「着物の価値と品質を示す重要な証明書」です。
証紙は産地ごとに決められた厳しい検査基準をクリアした反物だけに与えられる「登録商標」です。
証紙の役割は、伝統工芸品として認められている作品や、製作した織元の組合が基準に基づいて品質検査をした織物に付けられたという価値を示すものです。
なお、作家独自に作った活動経歴や工房のロゴマークなどを載せた証紙もあります。
記されている内容
一般的な証紙に記されている内容として、主に以下の項目があります。
・着物の生産地……その着物がどこで作られたのか示します。同じ種類の着物であっても、生産地によって染め方や織り方が異なるものもあります。
・織り元(製造者)の名前……制作者や製造メーカーの名前が記されています。また、組合によって技術が保証されている織り元であるという証明にもなります。
・伝統工芸品マーク……伝統工芸品のマークは「伝産法」という法律によって、伝統工芸品と認められた日の丸のデザインです。伝統工芸品として認められるには、
・日常生活で使う工芸品
・ほとんど手作業で製造される
・伝統的な技術や技法で製造される
・伝統的な原材料が変わらずに使われている
・工芸品の製造に原則として、少なくない(10企業以上または30人以上の)人が関わっている
という5つの品質基準をクリアしていなくてはいけません。
・機械織りか手織りか……着物には機械織りと手織りがあり、証紙にはどちらの織り方を用いたかが記載されています。
・原材料名……着物の素材が絹100%なら「絹100%」と明記されています。ちなみに博多織組合が出している四角い証紙は、絹50%以上で「金」、絹50%未満は「青」と、着物に使われている絹の割合に応じて色分けしています。
・染色方法……染色されている糸が着物に使われている場合は、証紙に染色方法が記載されています。
このように、証紙によって作品にある細やかな内容を知ることができます。
厳しい品質検査が行われ、さらに条件を満たしたものにのみ付けられる証紙は、本物の着物であると証明し、査定する上で重要とされています。
例:「大島紬」の場合
ここでは「本場大島紬」の証紙を例に挙げて、証紙にある内容をより深く理解していきましょう。
大島紬の織元組合は、本場大島紬である「旗印の鹿児島」本場奄美大島紬である「地球印の奄美」そして「高倉印の笠利」「鶴印の都城」の4箇所です。
織元組合が認めた「本場大島紬」の証紙には「旗印」「地球印」「鶴印」「高倉印」のどれか1つが必ず貼られています。
例えば、鹿児島県産の「本場大島紬」の証紙には長細い水色の台紙に、旗印が中央に描かれ、その上に鹿児島県産の印が押されています。
そして、証紙の右側には伝統工芸品のマーク、左側には組合名、製造者名、染め方(先染め)、品質表示(綿100%)と書いてあります。
証紙と落款との違いについて
落款(らっかん)とは着物の作家名が書かれた印です。
落款は作者のサインのようなもので、同じ作家の作品であればどれも同じ落款がつけられます。
同じブランドの着物でも、誰が作ったかによって複数の落款が存在します。
ただし、落款を登録をしないと作家と名乗れない場合もあります。
例えば、加賀友禅は加賀染振興協会のホームページに、協会が認定した作家の落款が管理されており、調べると作家名が分かるようになっています。
協会のホームページ内で作家名を検索して、落款登録がなければ偽物の恐れがあります。
一方、証紙は生産地、織元や織元組合のマーク、製作技法などが記載されている着物の価値を記した紙です。
落款は作家名の刻印ですが、証紙は着物の品質が分かる情報が記載される点が異なります。
さらに、落款と証紙ではそれぞれ付いている場所にも違いがあります。
落款は衿先(えりさき)かおくみに刻印があり、証紙は仕立てる前の反物なら裾の方に貼られ、着物に仕立てた後は端切れのようになっています。
証紙がない着物は売れない?
実は、証紙には以下のような偽物が存在しています。
・素材は絹100%と書いてあるのに、化学繊維で作られた紬調織物
・海外で作った商品なのに日本で生産したと偽っている
・勝手に有名ブランドのネーミングを謳っている
このように偽装された証紙は、着物自体も本物かどうかが見分けが付かない恐れがあります。
一方、証紙が付いていない着物の全てが偽物というわけではないです。
伝統工芸品の組合に入っていない製造者が作った作品には、高級な着物でも証紙が付いていません。
着物に証紙が付いていなかったり、証紙が偽物かどうかが分からなくても、着物買取業者に査定をしてもらって着物の価値を見極めてもらいましょう。